14文字の伝言

Eine Botschaft in vierzehn Zeichen

あなたを叩き起こし

今日も騒がしい一日が始まる

「好き嫌いせず、野菜も食べなさい」と

また効き目の薄い小言を繰り返す

今日もまた泥だらけになって

傷を作って帰ってくるのかしら

心配ばかりで小皺も増えるわ

まったく、男の子の母親なんて

なるもんじゃないわ！

けれど、そんな毎日を

私は愛してた

本当は残酷なこの世界を

ああ、時間よ止まれ

穏やかな時をずっと

ずっと、ずっと、ずっと

あなた達と生きたかった

でもそれは愚かな願い

人はいずれ死にゆくもの

子は育ち、親を超えて行く

それが、それこそが幸せ

平凡な私は

長い間、自分の命以上には

価値のあるものを見つけられなかった

あなたが生まれるまでは

だから特別じゃなくても

人より優れてなくても

誰かに認められなくても

あなたは生きてるだけで

既に偉大なのよ

お願い、どうか忘れないで

たとえあなたが生まれたことを

いつか呪う日が来たとしても

信じているわ

あなたの行く道は間違ってなどいないと

どうか、自分を信じて

最期の空に羽ばたく鳥よ

どうか、あの子に伝えておくれ

愛しているわ、愛しているわ

生まれてきてくれてありがとう